県庁の残業は本当に多い?本庁と出先機関で違う働き方のリアル

はじめに:「県庁ってブラックなんですか?」

先日、民間企業から県庁への転職を考えている方から、こんな相談を受けました。

「県庁から内定をもらえたんです。でも、ネットで調べると『県庁はブラック』『残業がすごい』という話ばかり出てきて、不安になってしまって……」

今の職場は残業も少なく、ワークライフバランスは整っている。ただ、仕事のやりがいを求めて公務員を目指した。だからこそ、転職して生活が崩れてしまわないかが心配だ、というご相談でした。

元市町村の人事担当として、また県庁や警察など、いろいろな公務員の知り合いから聞いてきた話も踏まえて、正直にお答えしました。

この記事では、そのときにお話しした県庁の働き方のリアルを、できるだけ包み隠さずお伝えします。

結論:県庁は忙しい傾向。ただし部署によって差が大きい

先に結論をお伝えします。

県庁は、市役所や町村役場と比べると、残業が多い傾向にあるのは事実です。

ただ、「ブラック」という言葉をどう捉えるかは人それぞれです。そして何より、県庁の中でも、部署によって忙しさがまったく違います。定時近くに帰れている部署もあれば、毎晩遅くまで明かりがついている部署もある。ここが、県庁の働き方を理解するうえで一番大事なポイントです。

市役所の残業事情については、私の実体験をこちらの記事で紹介しています。あわせて読むと、県庁との違いがイメージしやすいと思います。

当時働いていた時の残業時間も公開!定時に退社している?公務員の残業 当時働いていた時の残業時間も公開!定時に退社している?公務員の残業

本庁と出先機関で、働き方がまったく違う

県庁の働き方を理解するカギは、「本庁」と「出先機関」の違いです。

本庁は、夜遅くまで明かりがついている

本庁とは、県庁所在地にある、いわゆる「県庁」の建物で働く部署のことです。県全体の政策を考えたり、予算を組んだり、議会の対応をしたりと、県の中枢を担っています。

ある県の県庁は、地元で「不夜城」と呼ばれています。夜、終電近くに県庁の前を通っても、まだ多くの窓に明かりがついている。それくらい、本庁は忙しい部署が多いのです。

私が知り合いの話から感じている肌感覚では、本庁で働く人のうち、

  • 6割くらいは、定時から1〜2時間ほど残業して、夜7時ごろには帰っている
  • 4割くらいは、夜10時や11時まで働いている

というイメージです。もちろん県によって違いますが、「全員が毎晩遅くまで働いている」わけではない一方で、「かなり忙しい人も一定数いる」というのが実態に近いと思います。

出先機関は、定時で帰れる部署もある

一方の出先機関は、県内の各地域に置かれている事務所のことです。県税事務所、保健所、土木事務所、児童相談所などがこれにあたります。

出先機関は、本庁に比べると落ち着いている部署が多く、夕方5時や6時に帰れるところも少なくありません。出先機関の働き方が好きで、本庁に戻りたがらない人もいるくらいです。

ただし、出先機関にはデメリットもあります。それは、勤務地が自宅から遠くなる可能性があることです。県は市町村よりもずっと範囲が広いので、県の端から端への異動もありえます。

もっとも、遠い勤務地でも定時に帰れるなら、本庁で深夜まで働くより早く家に着く、ということも十分ありえます。どちらが合うかは、人によって変わります。

新卒と中途で、最初の配属の傾向が違う

新卒で入った場合は、最初の2年ほどを本庁で過ごし、そのあと出先機関に出て、また本庁に戻る……というパターンがよくあります。

一方、社会人経験者として中途で入った場合は、最初から出先機関に配属されることも珍しくありません。転職を考えている方は、「最初から本庁で激務」と決めつける必要はない、ということは知っておいてよいと思います。

異動の仕組みや配属の決まり方については、こちらの記事も参考にしてください。

元人事が異動の真実を語ります!異動ガチャの実態と乗り切り方 元人事が異動の真実を語ります!異動ガチャの実態と乗り切り方

夜遅くまで窓に明かりがついている庁舎の建物の線画イラスト

公表されている残業時間の平均は、うのみにしない

県庁の残業について調べると、国や県が公表している「月平均の残業時間」のデータが見つかります。地域によっては、月15時間前後という数字になっていることもあります。

この数字を見て、「なんだ、思ったより少ないじゃないか」と安心する方もいるかもしれません。ですが、私の感覚では、この数字は実態より少なめに出ていると考えたほうがいいと思います。

理由は2つあります。

理由1:部署ごとの偏りが、平均でならされてしまう

先ほどお話ししたように、県庁の忙しさは部署によって大きく違います。定時で帰れる部署と、月に何十時間も残業する部署を平均すると、数字はどうしても「ほどほど」に見えてしまいます。

自分がどちらの部署に配属されるかは、平均値からはわかりません。

理由2:記録に残らない残業がある

もうひとつは、いわゆる記録に残らない残業です。最近は管理がかなり厳しくなってきましたが、それでも、残業として申請しきれていない時間がゼロとは言い切れないのが実情です。

また、平日に仕事が終わらず、土日に出勤して仕事を片付けている人がいる部署もあります。

忙しくなりやすい分野の傾向

どの部署が忙しいかは県ごとの事情によりますが、一般的には、

  • 高齢者福祉や子ども関係など、福祉の分野
  • 商工業や産業振興の分野
  • 先進的な取り組みに力を入れている県の、その担当部署

などは忙しくなりやすい傾向があります。逆に言うと、地方の小さな県でも、新しい政策をどんどん打ち出している県は、職員の残業も多くなりがちです。

内定後に働き方を確かめる方法

では、実際に内定をもらったあと、どうやって働き方を確かめればいいのでしょうか。

人事に「中央値」を聞いてみる

ひとつ目の方法は、県の人事担当に直接聞いてみることです。内定後の質問で内定が取り消されることは、よほどのことがない限りありません。

聞き方のコツは、「平均」ではなく「中央値」を聞くことです。たとえば、こんなふうに聞いてみてください。

「家族が働き方を心配していまして。私自身はやる気があるので大丈夫なのですが、参考までに、残業時間の中央値はどれくらいか教えていただけますか?」

人事担当者は、後から「話が違うじゃないか」と言われることを一番恐れています。ですから、明らかなうそをつくことはまずありません。はっきりした数字は出なくても、「部署によっては忙しいところもあって……」と言葉を選びながら答えてくれるはずです。その言い方から、温度感はつかめます。

実際に働いている人に聞いてみる

ふたつ目は、実際に県庁で働いている人の話を聞くことです。

県庁に知り合いがいなくても、親戚や友人をたどれば、意外と身近に県の職員がいるものです。人事の公式な答えより、現場の生の声のほうが参考になることも多いです。

配属先が決まるまで、引っ越しは待つ

もうひとつ、内定後に気をつけてほしいことがあります。それは、配属先が決まる前に引っ越さないことです。

人事は配属を考えるとき、「この人の家はどこか」「どこまでなら通えるか」を見ています。先に県の中心部に引っ越してしまうと、「この人は県のどの地域にも行けそうだ」と判断され、かえって遠い地域への配属の可能性が広がってしまうことがあります。

まずは今の住まいのまま入庁して、配属先が決まってから住む場所を考える。このほうが、選択肢を自分で持っておけます。

内定後にやっておくべきことは、こちらの記事でもまとめています。

元公務員人事の本音。公務員に内定した後、しておくべきことは? 元公務員人事の本音。公務員に内定した後、しておくべきことは?

電話で丁寧に問い合わせをしている人の線画イラスト

忙しさと引き換えに得られるもの

ここまで、県庁の忙しさを中心にお話ししてきました。相談者の方を少し不安にさせてしまったかもしれません。ですが、県庁で働くことには、忙しさと引き換えに得られる大きなメリットもあります。

景気に左右されない、安定した給料

県庁の給料は、毎年少しずつ上がっていく仕組みです。景気が悪くなっても、民間企業のように急に下がることは基本的にありません。

特に地方では、県庁ほどの給料を出せる企業はそう多くありません。将来、家庭を持ったときにも、自分の収入だけで生活を支えられるだけの安定があるのは、大きな安心材料です。

病気になったときの、手厚い保障

福利厚生といっても、IT企業のような華やかなものではありません。県庁の福利厚生の本当の強みは、万が一のときの保障です。

たとえば、心の病気で長く休まなければならなくなったとしても、すぐに職を失うことはありません。休んでいる間も、給料の一定割合を受け取りながら療養できる期間が長く設けられています。住宅を買うときにも、社会的な信用の高さから、有利な条件でお金を借りやすいという面もあります。

結婚や出産のあとの、配属への配慮

県庁は、職員のライフイベントへの配慮が比較的しっかりしています。

結婚や出産、育児休業からの復帰のタイミングなどで、本人がきちんと希望を伝えれば、忙しすぎない部署へ異動させてもらえることも多いです。若いうちは忙しい部署で経験を積み、家庭を持ってからは働き方を調整する。そうしたキャリアの組み立てがしやすいのは、公務員ならではのメリットです。

まとめ:忙しさの「中身」を知ったうえで選ぶ

この記事のポイントを振り返ります。

  • 県庁は市町村より忙しい傾向があるが、部署によって差が大きい
  • 本庁は忙しい部署が多く、出先機関は定時で帰れる部署もある。ただし勤務地が遠くなることも
  • 公表データの平均値は、部署ごとの偏りや記録に残らない残業で、実態より少なく見えやすい
  • 内定後は、人事に「中央値」を聞く、現役職員の声を聞く、配属が決まるまで引っ越さない
  • 忙しさと引き換えに、安定した給料、手厚い保障、ライフイベントへの配慮が得られる

県庁で働くかどうかは、何を大切にしたいかで答えが変わります。入ってから数年は忙しいかもしれない。それでも、やりがいのある仕事と長い目で見た安定を選ぶのか。それとも、今の働きやすさを優先するのか。

大切なのは、イメージや噂だけで判断せず、忙しさの中身をきちんと知ったうえで選ぶことです。あなたが納得して選んだ道なら、きっとどちらを選んでも前に進めるはずです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます😊

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