想定問答集は「覚えない」が正解|暗記せず言える状態のつくり方

はじめに:分厚い想定問答集を作った人ほど、本番で崩れる

公務員の面接対策として、想定問答集を作る方はとても多いです。

「志望動機は?」「自己PRは?」「前職を辞めた理由は?」「5年後どうなっていたいですか?」……と、聞かれそうな質問を書き出して、ひとつずつ回答を作っていく。真面目な方ほど、その数は数十問、ときには100問を超えます。

私のもとにも、驚くほど作り込まれた問答集を持ってきてくださる方がいます。正直、「ここまで書けるのはすごい」と感心することも少なくありません。

ただ、元市町村の人事担当として、模擬面接を重ねる中で気づいたことがあります。

それは、問答集をしっかり作り込んだ人ほど、本番で崩れてしまうことがあるということです。

この記事では、想定問答集を「書く」ことの価値と、それを「覚える」ことの落とし穴、そして本番で本当に役に立つ問答集の使い方をお伝えします。

想定問答集を書くこと自体は、間違いなく正しい

まず誤解のないようにお伝えしておくと、想定問答集を書くことには大きな意味があります。私は、書けるだけ書いたほうがいいと考えています。

書くと、自分の考えが整理される

頭の中でなんとなく思っていることは、いざ言葉にしようとすると意外と出てきません。

「なぜ公務員なのか」「なぜこの市なのか」「前の職場で何を学んだのか」。こうした問いに文章で答えようとすると、自分の考えの曖昧な部分や、つながっていない部分がはっきり見えてきます。

書いては直し、直しては書く。この作業そのものが、自己分析であり、志望動機の磨き込みになります。

書いたものは「安心のお守り」になる

もうひとつの効果は、精神的な安定です。

面接の前日や当日の朝、「これだけ準備したんだから大丈夫」と思えるかどうかは、本番の落ち着きに大きく影響します。分厚い問答集は、それ自体がお守りのような役割を果たしてくれます。

どんな質問が来ても「つなげる先」ができる

さらに、たくさん書いておくと、想定していなかった質問が来たときにも「あ、これはあの回答の考え方が使えるな」と、手持ちの材料につなげられるようになります。

書くことで、自分の中に引き出しが増えていくわけです。

丸暗記がかえって逆効果になる理由

ここまで読むと、「じゃあ、作った問答集を全部覚えればいいのでは?」と思うかもしれません。

ですが、ここが落とし穴です。書くことは良いのですが、それを一字一句覚えようとするのは違います。

質問の順番や聞き方は、想定どおりには来ない

面接は、問答集の順番どおりには進みません。

たとえば、「志望動機をお願いします」から始まると思っていたら、いきなり「これまで一番力を入れたことは何ですか?」と聞かれる。「前職の退職理由は?」と聞かれると思っていたら、「今の仕事のやりがいは何ですか?」という角度から入ってくる。

暗記した文章は、決まった問いに決まった順番で答えるときには強いのですが、聞かれ方が少し変わるだけで、どこから話せばいいのかわからなくなってしまいます。

思い出すことに頭を使い、相手の話を聞けなくなる

もうひとつの問題は、暗記した文章を「思い出す」ことに頭がいっぱいになってしまうことです。

面接官の質問を聞きながら、「この質問は問答集の何番だっけ」「次の一文はなんだったっけ」と考えていると、目の前の面接官とのやりとりがおろそかになります。

面接官から見ると、こちらの目を見ずに、どこか遠くを見ながら文章を読み上げているような印象になってしまいます。内容は立派でも、「この人と一緒に働くイメージ」がわきにくくなるのです。

面接中に言葉が出てこなくなったときの対処法は、こちらの記事でも詳しく解説しています。

面接中に頭が真っ白になったら?元人事が教える沈黙の乗り切り方

分厚い書類の束を前に頭を抱える受験者の線画イラスト

核になる3つだけは「暗記しなくても言える」状態にする

では、どこまで準備すればいいのか。私がおすすめしているのは、核になる3つの回答だけは、何も見なくてもスラスラ話せる状態にしておくことです。

準備しておくべき3つ

  1. 志望動機(なぜ公務員なのか、なぜこの自治体なのか)
  2. 自己PR(自分の強みと、それを示すエピソード)
  3. これまで一番力を入れたこと(具体的な取り組みと、その結果)

公務員の面接で聞かれることの多くは、実はこの3つのどれかにつながっています。「当市で取り組みたいことは?」は志望動機の延長ですし、「困難を乗り越えた経験は?」は力を入れたことの延長です。

この3つの軸がしっかりしていれば、少し角度の違う質問が来ても、軸に戻って答えることができます。

「暗記」ではなく「記憶」する

ここで大事なのは、3つの回答も、一字一句を暗記する必要はないということです。

言葉づかいが毎回少し変わってもかまいません。話す順番が多少前後しても大丈夫です。大切なのは、「これを聞かれたら、この話をする」という話の骨組みと中身を記憶していることです。

イメージとしては、友人に「最近どんな仕事してるの?」と聞かれたときに、自分の仕事を説明するのに近い感覚です。毎回同じ文章で話す人はいませんが、話す内容はぶれませんよね。

声に出して、何度も話してみる

暗記せずに言える状態をつくるいちばんの近道は、声に出して話す練習を繰り返すことです。

問答集を見ながら読み上げるのではなく、紙を伏せて、自分の言葉で話してみる。最初はつっかえても大丈夫です。何度か繰り返すうちに、自然と話の流れが体に入っていきます。

書き上げた問答集の見直し方

最後に、問答集を書き上げたあとにやってほしい見直しを2つ紹介します。

同じ言葉を使い回していないか探す

問答集を通して読むと、同じ言葉を何度も使っていることに気づくことがあります。

以前ご相談いただいた方は、志望動機の中で「幅広い業務に携われる」という言葉を何度も使っていました。表現として間違いではありません。ただ、この言葉だけで志望理由を説明しようとすると、面接官は「幅広い業務なら、隣の市でも県庁でもいいのでは?」と考えてしまいます。

この方が本当に言いたかったのは、こういうことでした。

  • 志望先の市は、都市の成り立ちから業務の幅が広い
  • 業務が広いということは、それだけ課題も多い
  • 限られた人数でたくさんの課題に向き合うために、デジタル化に力を入れている
  • だからこそ、自分の経験が活かせると考えた

「幅広い業務」は、話の入り口にすぎません。そこから「だからこの自治体なんだ」という結論まで、一続きで話せるかを確かめてください。

使い回している言葉を見つけたら、「この言葉の先に、本当は何を言いたいのか」を書き足してみましょう。自分の考えが一段深まります。

「なぜこの自治体なのか」の伝え方については、こちらの記事も参考にしてください。

志望動機で差がつく!『なぜここでなければならないのか』を語る技術 志望動機で差がつく!『なぜここでなければならないのか』を語る技術

本番が近づいたら、問答を増やすのをやめる

もうひとつは、問答集づくりをやめるタイミングです。

面接の直前まで「この質問も来るかもしれない」と問答を増やし続ける方がいます。でも、志望動機や自己PRをしっかり考え抜いた方なら、予想外の質問が来ても、それまでに考えてきたことでかなり答えられるはずです。

本番が近づいたら、問答の数を増やすよりも、声に出して話す練習や、話し方・表情に意識を移すほうが効果的です。書くことで整えた中身を、今度は自分の口から自然に出せるように仕上げていく段階に切り替えましょう。

書き込みをしたノートを閉じて、前を向いて話す練習をする人の線画イラスト

まとめ:問答集は「台本」ではなく「引き出し」

想定問答集についてのポイントを振り返ります。

  • 問答集を書くことは、考えの整理と安心につながるので、どんどん書いてよい
  • ただし丸暗記は逆効果。質問の順番が変わると崩れ、面接官との会話もおろそかになる
  • 志望動機・自己PR・力を入れたことの3つだけは、暗記ではなく「記憶」して、何も見なくても話せる状態にする
  • 書き上げたら、同じ言葉の使い回しを探し、その先にある本当の理由まで書き足す
  • 本番が近づいたら、問答を増やすより話し方の練習に切り替える

問答集は、本番で読み上げる台本ではありません。どんな質問が来ても、自分の言葉で答えるための引き出しです。

これまで積み上げてきた準備は、決して無駄にはなりません。あとはそれを、目の前の面接官との会話の中で、自分の言葉にして届けるだけです。自信を持って臨んでください。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます😊

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