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はじめに:「役所で働いている」は、武器にも落とし穴にもなる
最近、私のもとには会計年度任用職員として役所で働きながら、正規職員を目指している方からの相談が増えています。
会計年度任用職員とは、自治体に1年単位の任期で採用される職員のことです。専門職として採用されている方もいれば、事務補助として窓口や庶務を担っている方もいます。
実際に役所の中で働いているので、行政の仕事のイメージはしっかりつかめている。住民の方と向き合った経験もある。一般の受験者と比べれば、間違いなく有利なスタートラインに立っています。
ただ、元市町村の人事担当として、正直にお伝えしておきたいことがあります。
それは、「現場を知っている」という強みは、伝え方を間違えると、かえって面接官の反感を買ってしまうということです。
この記事では、会計年度任用職員の方が正規職員の面接に臨むときに、自分の経験をどう伝えればいいのか。面接官の本音とあわせて、具体的な言い方をお伝えします。
会計年度任用職員の経験は、志望動機の強い材料になる
住民の苦しさを「現場で見た」経験には説得力がある
まず前提として、会計年度任用職員としての経験は、志望動機を語るうえで大きな武器です。
たとえば、会計年度として採用されたものの、繁忙期には保育園の入園手続き(いわゆる「保活」)の窓口を手伝うことになった、という方がいました。
窓口には、仕事に復帰したいのに子どもの預け先が見つからず、職場からは早く戻ってこいとプレッシャーをかけられ、涙ながらに相談に来る保護者の方がたくさんいます。そうした方々に毎日向き合う中で、「担当の仕事だけでは救えない人がいる。もっと多面的に市民を支える仕事がしたい」と感じるようになった。
こうした経験は、机の上で考えた志望動機とは説得力がまるで違います。実際に住民と向き合った人にしか語れない言葉は、面接官の心にも届きます。

ただし、面接官は「会計年度の経験」を冷静に見ている
一方で、面接官がその経験をどう受け止めるかは、また別の話です。
あまり良い言い方ではありませんが、正直にお伝えします。面接官の中には、「とはいえ、しょせん会計年度の仕事でしょう?」という目で見ている人も、実際にいます。
これは、会計年度任用職員の仕事を軽んじているというより、正規職員と会計年度任用職員では、担っている役割と責任の範囲が違うという認識があるからです。
正規職員は、数年ごとに異動して、税務も福祉も土木も経験します。予算を組み、議会で答弁の資料を作り、住民説明会で矢面に立ち、判断の責任を負います。面接官は、そうした仕事を何十年も積み重ねてきた人たちです。
その人たちから見ると、会計年度任用職員として見えている行政の姿は、まだ全体のごく一部に映ります。ここを理解しておかないと、面接で思わぬ落とし穴にはまってしまいます。
「現場を知っている」を得意げに語ると嫌われる理由
「わかったつもりの人」に見えてしまう
会計年度任用職員の方がやってしまいがちなのが、現場を知っていることを、つい得意げに語ってしまうことです。
- 「窓口のことなら、正規の職員さんより私のほうが詳しいと思います」
- 「役所の仕事の流れは、もう一通りわかっています」
- 「入庁したらすぐに即戦力として動けます」
本人としては、意欲や自信をアピールしているつもりです。でも、面接官の耳にはこう聞こえます。
「一部しか見ていないのに、役所の仕事をわかったつもりになっているな」
面接官は、正規職員として何十年も働いてきた人たちです。その人たちの前で「もうわかっています」という態度を見せると、謙虚さがない人、入庁後に教えにくい人という印象を持たれてしまうんです。
職場への不満や改善提案は「上から目線」に聞こえやすい
もう一つ注意したいのが、今の職場のやり方への不満や、改善提案の伝え方です。
「今の職場の手続きは無駄が多いので、正規職員になったら変えたいです」
問題意識があること自体は悪くありません。でも、会計年度任用職員の立場から語ると、「全体の事情を知らないのに、外から文句を言っている」と受け取られるリスクが高いんです。
手続きが複雑なのには、法律や予算、他の部署との調整など、会計年度任用職員の立場からは見えにくい理由があることも多いです。面接官はそれを知っているからこそ、軽々しい改善提案に厳しくなります。
さらに言えば、面接官は「この人は、うちに入っても同じように職場の悪口を言うのでは?」とも考えます。今の職場の批判は、どんな言い方をしても、基本的にプラスには働きません。
経験は「学ばせてもらった」という姿勢で伝える
では、どう伝えればいいのか。ポイントは、経験を「自分の手柄」ではなく「学ばせてもらったこと」として語ることです。
NG例とOK例を比べてみる
たとえば、窓口での経験を志望動機につなげる場合を考えてみましょう。
NG:「保活の窓口を担当してきたので、子育て支援の業務は一通り理解しています。正規職員になれば、すぐに即戦力として貢献できます」
OK:「保活の窓口を手伝う中で、困っている保護者の方の多さを目の当たりにしました。同時に、正規職員の方々が制度の運用や他の部署との調整まで担い、責任を持って判断している姿を近くで見て、自分が見ていたのは仕事のほんの一部だったと気づきました。今度は私自身がその責任を担う立場で、住民の方を支えたいと考えています」
どちらも同じ経験を話しています。でも、NG例は「私はもうできます」、OK例は「現場で気づかせてもらい、だからこそ正規として責任を担いたい」という構成になっています。
面接官が「この人と一緒に働きたい」と思うのは、明らかに後者ですよね。
「会計年度では担えない部分」に踏み込みたい、を動機にする
このOK例のポイントは、正規職員と会計年度任用職員の違いを、自分でちゃんとわかっていることが伝わる点です。
「しょせん会計年度でしょう?」と思っている面接官に対して、一番効くのは反論ではありません。「私自身、会計年度の立場で見えていたのは一部だとわかっています。だからこそ、その先の責任を担いたいんです」と、先回りして言えることです。
- 異動を通じて、さまざまな分野の仕事を経験したい
- 制度の運用や企画の段階から関わりたい
- 判断の責任を負う立場で、住民の方に向き合いたい
このように、会計年度任用職員では担えない部分に踏み込みたい、という形で志望動機を組み立てると、謙虚さと意欲の両方が自然に伝わります。
経験をアピールするのは「聞かれてから」でいい
もう一つのコツは、経験の具体的な中身を自分から前面に押し出しすぎないことです。
面接官は、あなたが役所で働いていることを書類で知っています。興味を持てば、「窓口ではどんな対応をしていたんですか?」と必ず聞いてきます。
そのときに初めて、具体的なエピソードを丁寧に話せばいいんです。聞かれてから話す経験談は、自分から売り込む経験談よりも、ずっと素直に受け取ってもらえます。
「なぜ今の自治体を受けないの?」にも謙虚さが試される
会計年度任用職員の方が、今勤めている自治体とは別の自治体を受ける場合、ほぼ確実に聞かれるのが、「今の自治体で正規職員を目指さないのはなぜですか?」という質問です。
ここでも、言い方には十分な注意が必要です。
NG:「今の自治体は規模が大きすぎて、一人ひとりの住民にきちんと向き合えないと感じたからです」
これは、今の職場への批判に聞こえてしまいます。しかも、その自治体の正規職員がどんな思いで働いているかを、会計年度任用職員の立場で断定しているようにも映ります。
OK:「今の職場で、住民の方と一対一で向き合う仕事の大切さを学びました。そのうえで、さまざまな自治体の取り組みを調べる中で、御町が〇〇のように住民との距離が近い施策に力を入れていることを知り、自分が学んだことを一番活かせる場所だと感じました」
今の職場は「学ばせてもらった場所」として敬意を払い、志望先を選んだ理由は志望先の具体的な取り組みで語る。この形なら、批判に聞こえることはありません。
なお、志望先の取り組みは、公式サイトや広報誌で事実として確認できるものを選んでください。実際にはそこまで力を入れていない施策を理由にすると、深掘りされたときに志望動機ごと崩れてしまいます。

まとめ:経験は「誇り」、伝え方は「謙虚」に
会計年度任用職員として役所で働いた経験は、正規職員を目指すうえで間違いなく大きな武器です。ただし、その武器は伝え方次第で、面接官の反感を買う原因にもなります。
- 面接官の中には「しょせん会計年度」と見ている人もいる、と心得ておく
- 「現場を知っている」を得意げに語らない。今の職場の批判もしない
- 経験は「学ばせてもらったこと」として伝え、「正規として責任を担いたい」につなげる
- 具体的なエピソードは、聞かれてから丁寧に話す
経験には誇りを持ちつつ、伝え方は謙虚に。このバランスが取れる人こそ、面接官が「一緒に働きたい」と感じる人です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます😊
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