「面接は完璧だったのに…」民間出身の”優秀な人”ほど公務員試験で落ちてしまう意外な理由

はじめに

「面接の手応えは完璧だった」

「面接官も私の実績に驚いていたし、何度も頷いてくれた」

「論理的に破綻なく答えられた」

面接が終わった直後、確かな手応えを感じていたにもかかわらず、届いたのは「不合格通知」。

「なぜ? 私の何がいけなかったの?」

「まさか、出来レースだったんじゃ…?」

そんなふうに疑心暗鬼になってしまう方が、実は少なくありません。

りゅう

こんにちは、りゅうです。公務員の人事(採用・教育)を経験し、現在は民間企業で人事をしています。今回は、採用側の立場から見てきた「優秀なのに落ちる人」の共通点についてお話しします。

特に、民間企業でバリバリ実績を上げてきた自信のある方ほど、この「謎の不合格」に陥りやすいんです。

今回は、「なぜ個として優秀な人が、公務員試験で落とされることがあるのか」。その残酷とも言えるリアルな裏事情をお話しします。

役所が求めているのは「一点突破の天才」ではない

まず、大前提として知っておくべきは、民間企業と公務員とでは「優秀さ」の定義が少し違うということです。

民間企業であれば、圧倒的な売上を作れる人や、個人の突破力で現状を打破できる人は「喉から手が出るほど欲しい人材」です。

能力チャートで言えば、ある一つの項目が突き抜けている「一点突破型」が好まれます。

しかし、市役所や県庁などの公務員組織は違います。

彼らが求めているのは、「きれいな六角形」の人材です。

「凹み」がないことの重要性

突出した能力があることよりも、「凹んでいる部分がないこと」の方が重要視されます。

例えば、企画力がずば抜けて高くても、「協調性」や「調整力」が極端に低い(凹んでいる)人は、組織のリスクと見なされます。

「この人、能力は高いけど、上司の言うこと聞かなそうだな…」

「一人で突っ走って、周りと軋轢を生みそうだな…」

面接官に一度でもこう思わせてしまうと、どんなに素晴らしい実績をアピールしても、合格への道は遠のいてしまいます。

なぜなら、公務員組織は「チームプレー」が基本だからです。

どんなに優秀でも、一人で完結する仕事はほぼありません。必ず誰かと協力して、調整して、合意形成して、仕事を進めていく。

その中で「協調性がない人」「自分の意見を曲げない人」は、組織にとってリスクでしかないんです。

【実録】80点の人より70点の人が選ばれる「本当の理由」

ここで、私が人事として見てきた「合否の分かれ目」についてお話しします。

これが、優秀な人が落ちる最大の理由の一つです。

例えば、採用試験で以下の2人の候補者がいたとします。

Aさん(評価80点): 論理的思考力が抜群。面接官の痛い質問にも完璧に切り返し、正論で圧倒するタイプ。「個の能力」は非常に高い。

Bさん(評価70点): Aさんほどの鋭さはないが、受け答えが丁寧。面接官のアドバイスや意図を素直に汲み取ろうとする姿勢がある。「組織適応力」が高そう。

普通なら、能力が高い「Aさん」を採用すべきに見えますよね?

しかし、実際の公務員試験(特に面接)では、70点の「Bさん」が採用され、80点の「Aさん」が不合格になることが往々にしてあります。

なぜ能力が高い人が落ちるのか?

それは、人事が「入庁後のトラブルリスク」を恐れるからです。

Aさんのような「論破タイプ」「正論タイプ」に対して、面接官はこう危惧します。

「確かに優秀だけど、配属先で先輩や市民と衝突しそうだな…」

「自分の意見に固執して、組織の決定に従わないんじゃないか?」

一方で、Bさんに対してはこう感じます。

「飛び抜けた才能はないかもしれないが、どの部署に行っても周りと上手くやれるだろう」

「市民対応も安心して任せられる」

公務員組織は、長期的な信頼関係で成り立っています。

そのため、**「扱いづらい80点」よりも「安心して任せられる70点」**の方が、組織としての評価は高くなるのです。

「可愛げ=謙虚さ」こそが最強の武器

では、80点の人が70点の人に勝つにはどうすればいいのか?

答えは、「可愛げ」を演出することです。

「可愛げって何?」と思った方もいるかもしれません。

可愛げ=謙虚さです。

決して、「媚びる」とか「無能を装う」という意味ではありません。

謙虚さの具体的な見せ方

①実績を語る時: 「私がやりました!」ではなく、「チームでやりました。その中で私はこういう役割を担いました」

②質問に答える時: 「絶対にこうです!」ではなく、「私はこう考えますが、もし違う視点があれば教えていただきたいです」

③自己PRの時: 「私は完璧です!」ではなく、「まだまだ学ぶべきことが多いですが、前職で培った○○の経験は活かせると考えています」

こうした「一歩引いた姿勢」が、面接官に「この人、組織に馴染めそうだな」と思わせるんです。

これを踏まえて、次は具体的なNG例とOK例を見ていきましょう。

【実例】こんな答え方をしたら落ちた

具体的に、どんな答え方がNGなのか。実際に見てきた失敗例をお伝えしますね。

NG例①:「上司とぶつかったけど、ねじ伏せた」

面接官: 「前職で困難だった経験を教えてください」

応募者: 「上司の方針に反対だったので、データを集めて論破しました。結果的に私の案が採用され、プロジェクトは成功しました」

一見、論理的で優秀に見えますよね?

でも、面接官の頭の中では赤信号が点滅しています。

「この人、入庁後も上司とぶつかるんじゃないか?」

「組織の決定に従わず、独断で動きそうだな…」

公務員組織では、「上司をねじ伏せる」ことは美徳ではありません。むしろリスクです。

OK例①:「上司と意見が違ったが、粘り強く調整した」

では、どう答えればいいのか?

応募者(改善版): 「上司と意見が違った際、まずは上司の意図を丁寧にヒアリングしました。その上で、データを示しながら私の考えも伝え、何度も話し合いを重ねました。最終的には、双方の良いところを取り入れた折衷案で進めることができ、プロジェクトは成功しました」

このように、「対立」ではなく「調整」の姿勢を見せることが重要です。

これが「可愛げ=謙虚さ」の実践例です。

NG例②:「私が主導して、チームを引っ張った」

面接官: 「チームで成果を出した経験を教えてください」

応募者: 「私がリーダーとして戦略を立て、メンバーに指示を出し、プロジェクトを成功に導きました」

これも、一見問題なさそうに見えますが、「私」が主語になりすぎています。

面接官は「チームワーク」を見たいのに、「個の強さ」しか伝わってこない。

OK例②:「チームの中心として、みんなで成果を出した」

応募者(改善版): 「チームの中心として動きましたが、メンバー一人ひとりの意見を丁寧に聞き、役割分担を工夫しました。特に、意見が対立した際には、全員が納得できるまで話し合いを重ねました。その結果、チーム全員で目標を達成することができました」

立場が何であれ、チームで結果を出した。その中心にいた。

この伝え方が、公務員面接では最も評価されます。

面接官は実際どこを見ているのか?

「可愛げ=謙虚さ」が重要なのはわかった。でも、具体的に面接官は何をチェックしているのか?

面接官が実際にチェックしているポイントをお伝えしますね。

チェックポイント①:協調性

「この人、周りと上手くやれるか?」

これが最優先です。

具体的には:

  • チームでの経験を語れるか
  • 対立した時にどう対処したか
  • 他者の意見を尊重できるか

チェックポイント②:柔軟性

「組織の決定に従えるか?」

公務員は、時に理不尽な決定にも従わなければいけません。

「自分の意見が通らなかった時、どう対応したか」という質問で、柔軟性を見ています。

チェックポイント③:市民対応力

「クレームに冷静に対応できるか?」

窓口でのクレーム対応は避けられません。

「困難な顧客対応をどう乗り越えたか」という経験を聞くことで、ストレス耐性と傾聴力を確認しています。

よくある質問に答えます

ここまで読んで、いくつか疑問が湧いてきた方もいるかもしれません。

よくある質問に答えますね。

Q1:一次面接で失敗しても、二次で挽回できる?

A:挽回はできます。ただし、そもそも一次に受かるべき。

一次面接で「ちょっと協調性が心配だな…」と思われても、二次面接で「実は柔軟に対応できる人だった!」と印象を変えることは可能です。

でも、正直言って、一次面接でマイナス印象を持たれた時点で、かなり不利です。

一次面接こそ、全力で臨むべき。

Q2:筆記が満点なら、面接の評価が低くてもカバーできる?

A:残念ながら、できません。

筆記試験は「足切り」のためのものです。

一定のラインを超えていれば、あとは面接の評価で決まります。

筆記が満点でも、面接で「この人と働きたくない」と思われたら、不合格です。

逆に、筆記がギリギリでも、面接で「この人と働きたい!」と思われれば、合格します。

公務員試験は、最終的には「人物評価」で決まると思ってください。

年齢や経歴による違い――ハロー効果は正直ある

最後に、ちょっと残酷な現実をお伝えします。

面接官も人間なので、年齢や経歴によって見方が変わることがあります。

年齢による違い

20代: 「若いから、多少失敗しても育てられる」という前提で見られます。謙虚さを見せつつ、「成長意欲」をアピールすればOK。

30代: 「即戦力として期待するけど、組織に馴染めるか?」という視点で見られます。「柔軟性」と「協調性」を強調すべき。

40代: 「豊富な経験があるけど、プライドが高すぎないか?」と警戒されます。「謙虚さ」と「学ぶ姿勢」を前面に出すことが重要。

経歴による違い(ハロー効果)

正直に言います。ハロー効果はあります。

  • 大手企業出身→「優秀そう」という前提で見られる(有利)
  • 中小企業出身→「実力は未知数」という前提で見られる(普通)
  • 転職回数が多い→「定着しないのでは?」と警戒される(不利)

ただし、これはあくまで第一印象です。

面接で「大手出身だけど、協調性がない」と判断されれば、すぐに不利になります。

逆に、中小企業出身でも「謙虚で、チームワークを大切にする人」と評価されれば、十分に逆転できます。

優秀な人が合格するための「引き算」と「足し算」

では、優秀な人はどうすればいいのでしょうか?

能力を隠して、わざと無能に見せる必要はありません。

必要なのは、アピールの仕方に「引き算」と「足し算」を加えることです。

「引き算」:「私」を減らす

民間出身の優秀な方がやりがちなのが、「私がやりました」「私の成果です」という「私(I)」を主語にした強烈なアピールです。

これは「個の強さ」を示すには有効ですが、やりすぎると「協調性がない」と判断されます。

「私」を主語にする頻度を減らし、「チーム」「みんなで」という言葉を増やしましょう。

「足し算」:協調性エピソードを加える

実績を話した後に、必ず「協調性(チームワーク)」のエピソードを足してください。

NG例(押しが強すぎる): 「私がリーダーとしてプロジェクトを牽引し、売上を200%にしました!」

OK例(協調性を足す): 「リーダーとしてプロジェクトを推進しましたが、メンバー一人ひとりの意見を傾聴し、反対意見とも粘り強く調整を行った結果、チーム一丸となって売上200%を達成しました」

このように、「自分はすごい」というアピールの後に、「周囲とどう調整したか」「泥臭い調整も厭わないか」という要素を付け加えるのです。

まとめ:優秀な人こそ「謙虚さ」を忘れずに

公務員試験において、能力の高さを見せるのはあくまで「前提条件」です。

最終的な合否を分けるのは、「一緒に働きたいと思えるか」「組織に馴染めるか」という、人間臭い部分です。

もしあなたが、面接で自分の実績を100%出し切って、それでも不合格になってしまった経験があるなら。

次はほんの少し肩の力を抜いて、「組織の中の自分」「調整役としての自分」をアピールしてみてください。

その「一歩引く余裕」こそが、面接官が求めている「公務員としての優秀さ」なのです。

最後に一つだけ。

これは決して「無能を装え」という話ではありません。

あなたの優秀さを、「組織で活かせる形」に翻訳するだけです。

その翻訳ができれば、あなたの合格はグッと近づきます。

頑張ってください!応援しています。

ではまた!

りゅう