「公務員に転職すれば、土日はカレンダー通りに休める」
民間企業で激務に追われている方の中には、そんな「安定」や「休日」を夢見て公務員を目指す方も多いのではないでしょうか。
確かに、基本的な勤務体制は整っています。残業も民間に比べれば少ないし、有休も取りやすい。
しかし、公務員には「土日の平穏を脅かす(?!)」避けては通れない壁が存在します。
それが、「地域イベント」です。
今回は、私が実際に経験したリアルなエピソードを交えつつ、民間出身者がギャップを感じやすい「公務員のイベント参加」の実態についてお話しします。
目次
華やかに見えるイベントの裏側
公務員になると、夏祭り、花火大会、市民マラソン、運動会など、地域の大きなイベントに関わる機会が激増します。「運営側」としてです。
テレビで映るのは笑顔の参加者や華やかな会場の様子ばかりですが、その裏では大量の職員が汗を流しています。
2つのパターンが存在する
イベントへの参加には、大きく分けて2つのパターンがあります。
①業務としての「動員」(残業代や振替休日が出る)
②実質強制の「ボランティア」(完全プライベート扱い)
特に若手や転職したての職員は、この両方の「貴重な戦力(体力枠)」として期待されます。
「え、体力枠って何?」と思われるかもしれませんが、要するに「重いものを運べる」「長時間立っていられる」「暑さ寒さに耐えられる」という意味です 笑
エピソード①:夏祭りの「出店」部隊
例えば、夏祭り。
企画部門が担当するオフィシャルな本部運営だけでなく、労働組合や若手職員の互助会などが「出店」を出すケースがよくあります。
これは業務ではなく「組合活動」や「地域貢献」という名のボランティアに近い扱いになることが多いのですが、ここで白羽の矢が立つのが若手や新人です。
真夏の鉄板地獄
「焼きそば、あと200食!焼いて焼いて!」
真夏の熱帯夜、気温35度を超える中、鉄板の前で汗だくになりながら焼きそばを焼き続ける……。
友人とビール片手に花火を見上げるはずだった週末が、まさかのテキ屋体験に変わる瞬間です。
しかも「ボランティア」扱いなので、残業代も出ません。
途中で「もう無理…」と思っても、横で頑張っている先輩職員や同僚の手前、弱音を吐くこともできず、ひたすら焼きそばをひっくり返し続ける。
「公務員って、デスクワークじゃなかったっけ…?」
そんな疑問が頭をよぎりますが、目の前には次々と注文が舞い込んできます。
でも不思議なことに、焼きそばを渡した子供が「ありがとう!おいしそう!」と笑顔で言ってくれた瞬間、少しだけ報われた気持ちになるんですよね。
それとそのあとの飲み会のビールはたまらなく美味かったですね。
エピソード②:マラソン大会の「孤独な警備」
市民マラソンもまた、大量の人員が必要なイベントです。
スタート地点やゴール地点は華やかで、テレビ取材も入ったりします。でも、ここで回ってくる仕事は、華やかなゴール地点でのテープ持ち……ではありません。
誰もいない交差点での虚無との戦い
私が経験したのは、「ランナーも観客もほとんど通らない、コース外れの路地裏」での警備です。
任務は「車や人がコースに入らないように立っていること」。
それだけ。
数時間にわたり、誰も通らない交差点でパイロンと共に立ち尽くす。スマホをいじるわけにもいかず、ただただ虚無と戦う時間……。
しかも、冬のマラソン大会だったので、寒風吹きすさぶ中での長時間立ちっぱなし。足は痛いし、手はかじかむし、トイレにも行けない。
「あれ、私、何のために公務員になったんだっけ?」と自問自答したくなる瞬間です。
たまに通りかかったおばあちゃんが「ご苦労様ねぇ、寒いでしょう」と缶コーヒーをくれたのが、唯一の救いでした。
エピソード③:地域運動会の「縁の下の力持ち」
意外と知られていないのが、地域の運動会への参加です。
自治体によっては、地域ごとに運動会を開催していて、そこに職員が「お手伝い」として駆り出されることがあります。
朝6時集合のリアル
運動会当日、集合時間は朝6時。
「え、土曜の朝6時?!」と目を疑いましたが、テントの設営や机椅子の搬入、ライン引きなど、やることは山積みです。
重い机やテントを何往復も運び、気づけば開会式の時点で汗だく。
そして運営側として、競技の進行補助、得点集計、迷子対応、トイレ案内など、あらゆる雑務をこなします。
「これ、体育祭の実行委員じゃん…」
学生時代を思い出しながら、グラウンドを走り回る一日。
でも、地域の子供たちが一生懸命走る姿や、おじいちゃんおばあちゃんが孫を応援する姿を間近で見ていると、「ああ、こういう地域コミュニティを守るのも公務員の仕事なんだな」としみじみ感じます。
お昼には地域の方が「お弁当どうぞ!」と手作りのおにぎりを差し入れてくれたりして、温かい気持ちになったのを覚えています。
民間出身者が戸惑う「無言の圧力」
民間企業から転職した人が一番戸惑うのが、「え、これ仕事じゃないの?」というグレーゾーンの存在です。
業務命令である「動員」ならば、残業代も出るし、振替休日も取れます。これは納得できます。
しかし、公務員の世界には部署によっては「地域行事には顔を出すよね?(=参加するよね?)」という無言の圧力が存在することがあります。
断れない空気感
「今度の日曜、地域の〇〇清掃があるんだけど、若手はみんな行くよね?」
こう言われて「いえ、プライベートなんで行きません」と断れる方もいますが、私のように心の弱い人は何も言えません笑
特に、入庁したばかりの頃は「地域に溶け込むため」「先輩との関係構築のため」という名目で、半ば強制的に参加を促されることもあります。
結果、貴重な休日を使って、給料の出ない地域活動に参加することになる。
これは「公私の区別」が明確な民間企業から来ると、最初はかなりストレスに感じる部分かもしれません。
ですが、何故か慣れてくるというのもあるのが面白いですよね。
「仕事」と「ボランティア」の境界線が曖昧
民間企業であれば、「これは業務時間内」「これはプライベート」という線引きが比較的はっきりしています。
でも、公務員の場合、「地域のため」「住民のため」という大義名分があると、その境界線が曖昧になりがちなんです。
「公務員なんだから、地域に貢献するのは当然でしょ?」
この言葉に、どう反論すればいいのか。正直、入庁当初は戸惑いました。
それでも「参加してよかった」と心から思える理由
ここまで「大変だ」「理不尽だ」という側面ばかり書きましたが、それでも私は「参加する価値はある」と断言します。
なぜなら、「地域の中に飛び込まないと見えない景色」があるからです。
①住民の「笑顔」に触れられる
普段、役所の窓口やデスクワークで接する住民の方は、何かしらの「困りごと」や「申請」を持ってくる場合がほとんどです。
「税金が高い」「手続きが面倒」「対応が遅い」
窓口では、クレームや不満を受けることも少なくありません。
でも、お祭りや運動会の会場にいる住民の方は、みんな笑顔です。
焼きそばを渡した子供が「ありがとう!」と笑ってくれる。
警備をしているとおばあちゃんが「ご苦労様、公務員さんも大変だねぇ」とお茶をくれる。
運動会で走り終わった子供が、汗だくで「楽しかった!」と言っている姿を見る。
「ああ、自分はこの人たちの生活を守るために働いているんだな」
そう肌で感じられるのは、泥臭い現場に出てこそです。
デスクの上で書類を処理しているだけでは、絶対に味わえない実感があります。
②「生の声」が仕事に活きる
イベントに参加すると、住民の方と自然な形で会話ができます。
「最近、公園の遊具が古くなってきて危ないのよ」
「バスの本数、もう少し増やしてほしいわ」
「子育て支援、もっと充実させてくれると助かるんだけどなぁ」
こういった「生の声」は、アンケートや窓口では出てこないリアルな意見です。
しかも、イベントという和やかな雰囲気の中だからこそ、住民の方も本音で話してくれることが多い。
こうした声を拾い上げて、自分の部署に持ち帰り、政策に反映させる。それが実現したときの達成感は、何物にも代えがたいものがあります。
③部署を超えた「人脈」ができる
役所は縦割り組織です。部署が違うと、同じ建物にいても全く交流がないなんてことも珍しくありません。
でも、イベントで一緒に汗を流した同僚とは、部署を超えた強い絆が生まれます。
「あの時の夏祭り、地獄だったよね(笑)」
「マラソンの警備、寒すぎて死ぬかと思った!」
こうして笑い合える仲間が庁内に増えることは、縦割り行政の中で仕事を進める上で最強の武器になります。
何か困ったことがあったとき、「あ、あの時一緒に焼きそば焼いた○○さんに相談してみよう」と思える関係性は、本当に貴重です。
部署間の連携が必要な案件も、スムーズに進むようになります。
④「公務員として成長できる」実感
イベント運営は、想像以上に大変です。
天候に左右されるし、予期せぬトラブルは必ず起きるし、クレームもあります。
でも、そうした中で「臨機応変に対応する力」が身につきます。
マニュアル通りにはいかない現場で、どう判断し、どう動くか。
これは、デスクワークだけでは絶対に学べないスキルです。
また、地域の方々とのコミュニケーション能力も格段に上がります。
「机の上だけじゃない、現場で動ける公務員」
そういう人材になれるのは、イベント参加という貴重な経験があってこそです。
⑤何より、「楽しい」
最後に、これが一番大事かもしれません。自分だけかもですが、、、
イベントって、純粋に楽しいんです。
もちろん、準備は大変だし、当日は疲れるし、筋肉痛にもなります。
でも、イベントが無事に終わったときの達成感。
参加者の笑顔。
「お疲れ様!」と労い合う同僚との一体感。
こういう瞬間に、「公務員になってよかったな」と心から思えます。
仕事の合間に、子供たちが楽しそうに遊んでいる姿を見たり、地域の方が「ありがとう」と声をかけてくれたりすると、疲れも吹き飛びます。
まとめ:地域を楽しむ「覚悟」を持とう
公務員の仕事は、デスクの上だけで完結するものではありません。
泥臭いイベント運営や、休日返上のボランティアも、地域を支える仕事の一部(あるいは延長線上)です。
これから公務員を目指す皆さん。
「土日が潰れることもある。でも、それも含めて地域を楽しんでやろう」
それくらいの「覚悟」と「遊び心」を持って飛び込んでくれば、きっと公務員生活は予想以上に充実したものになるはずです。
確かに、最初は「えっ、こんなことまでやるの?」と戸惑うこともあるでしょう。
でも、その先に待っているのは、住民の笑顔であり、同僚との絆であり、自分自身の成長です。
焼きそばを焼くスキルも、パイロンと共に虚無に耐えるスキルも、重い机を運ぶスキルも、立派な公務員のスキルの一つかもしれませんよ?
地域イベント、ぜひ前向きに楽しんでください!
ではまた!
