「公務員として働きたいと思いました」 「地域に貢献したいと考えています」
このような志望動機を準備していませんか?
先日、複数の公務員志望者の模擬面接を行いましたが、多くの方が同じ壁にぶつかっていました。それは「なぜその自治体・組織でなければならないのか」という問いに、説得力を持って答えられないという問題です。
今回は、実際の面接指導から見えてきた、志望動機で差をつけるための具体的な技術をお伝えします。
目次
よくある志望動機の3つの落とし穴

落とし穴1:「他でも言える理由」
受験者の回答例
「公共のために働きたいと思い、志望しました」
面接官の追加質問
「それなら他の自治体でもいいのでは?」
受験者の回答
「権限が大きいからです」
面接官の追加質問
「それなら都道府県の方がいいのでは?」
このように、志望動機が抽象的すぎると、面接官から次々と「他でもいいのでは?」という質問が飛んできます。
落とし穴2:「表面的な調査」
よくあるパターン
「貴自治体の○○施策に興味があります」
面接官はここで必ず聞きます:
- 「具体的にどの点に興味がありますか?」
- 「その施策の課題は何だと思いますか?」
- 「あなたならどう改善しますか?」
ホームページを見ただけの知識では、この深掘りに耐えられません。
落とし穴3:「本音が透けて見える」
ある受験者の例:
- 出身地とは全く関係のない自治体を受験
- 縁もゆかりもない場所
- 明らかに「採用があったから」という理由
面接官は人事のプロです。表面的な理由は簡単に見抜かれます。
「採用があったから」を説得力ある志望動機に変える4ステップ

でも、実は、「採用があったから」も立派な理由の一つです。問題は、それをどう料理するかです。
ステップ1:物理的な理由を整理する
まず、なぜその自治体・組織を選んだのか、物理的な理由を整理しましょう。
整理すべき要素
- 通勤可能範囲である
- 年齢制限に該当した
- 募集職種が自分の希望と合致した
- 試験日程が他と重ならなかった
NG例
「年齢的にここしか受けられなかったので」
OK例
「これまでの経験を活かせる職種で、かつ通勤可能な範囲を探していたところ、貴組織の募集を知りました」
物理的な制約は前向きな選択の結果として表現しましょう。
ステップ2:その土地との接点を作る
重要ポイント:面接までに必ず現地を訪れる
ある受験者のケース:
- 全く縁のない地域の組織を受験
- 面接まで2週間の猶予
私がアドバイスしたこと:
- 管轄地域のカフェや公園を訪れる
- 地元の人と少し会話する
- 街の雰囲気を肌で感じる
- できれば施設見学会などに参加する
改善前の志望動機
「環境保全の仕事に興味があります」
改善後の志望動機
「先日、貴組織の管轄地域を訪れました。その際、地元のカフェで店員さんと話す機会があり、『この街はゴミ収集がしっかりしていて、いつも綺麗』と誇らしげに話されていました。住民の方からそう感謝される仕事に携わりたいと強く感じました」
エピソードがあるだけで説得力が段違いです。
ステップ3:自分の価値観と結びつける
「なぜこの分野に興味があるのか」を深掘りしましょう。
悪い例(抽象的)
「観光推進に興味があります」
良い例(具体的)
「私は○○(観光施設)の近くで育ちました。ここでは様々なイベントがあり、私は毎回そのイベントに参加するのが大好きでした。
しかし、ある日、○○(気づくきっかけ)という事が起き、楽しむ側ではなく、このようなイベントは誰かの支えがあってできているものであることに気づきました。自分が支えられてきたものを、今度は自分が支える側になりたいと思いました」
ポイント:
- 個人的な体験がある
- 感情が込もっている
- 「なぜこの分野なのか」が明確
ステップ4:組織独自の魅力を見つける
他の似た組織ではなく、なぜここなのかを明確にします。
実例:複数の類似組織がある場合
ある受験者は、複数の市町村から一つを選ぶ必要がありました。
最初の志望動機(弱い)
「○○市でで働きたいです」
質問されたこと
- 「何故、隣の市ではだめなのですか?」
- 「隣の市が後で募集したら、そちらに移りませんか?」
改善のプロセス
- 採用説明会に参加していた事実を発掘
- そこで職員と話した経験を思い出す
- その時の印象を言語化する
改善後の志望動機
「実は、採用説明会で貴組織を訪問させていただきました。その際、現場の職員の方々が本当に生き生きと働いている姿を見て、強く印象に残りました。
これまで民間企業で働いてきましたが、ここまで楽しそうに、誇りを持って働いている方々を見たのは初めてでした。これは、組織の文化や職場環境が素晴らしいからだと感じました。
私もそのような環境で、長く貢献したいと思い、他の組織ではなく貴組織を志望しました」
この回答のポイント:
- 実際の行動(訪問)がある
- 具体的な印象(生き生きと働く姿)
- 比較(民間企業との違い)
- 結論(だからここ)
志望動機で絶対にやってはいけないこと
NG1:自治体・組織を否定する
悪い例
「貴自治体の○○施策は周知が不十分だと思います」
良い例
「○○施策は素晴らしい取り組みですが、さらに周知を強化することで、より多くの方に届けられると感じています」
批判ではなく、前向きな提案の形で伝えましょう。
NG2:嘘をつく
面接官は質問を深掘りします。嘘はすぐにバレます。
よくある嘘
- 行ったことのない施設を「訪問しました」
- 読んでいない資料を「拝読しました」
- 知らない施策を「興味があります」
知らないことは素直に「勉強不足で申し訳ありません」と認めた方が印象は良いです。
NG3:抽象的すぎる表現
NG例
- 「地域のために働きたい」
- 「住民サービスの向上」
- 「公共の福祉」
これらは誰でも言える言葉です。あなた独自のエピソードと組み合わせましょう。
面接官の心を動かす志望動機の共通点
これまで多くの面接指導をしてきて気づいたことがあります。
印象に残る志望動機には必ず以下の要素があります:
- 具体的なエピソード
- 実際に行った場所
- 実際に会った人
- 実際に感じたこと
- 自分の言葉
- 借り物の言葉ではなく
- 自分の経験から出た言葉
- 感情が込もった言葉
- 行動の証拠
- 調べた
- 訪れた
- 話を聞いた
- 考えた
- つながりの明確さ
- 過去の経験→現在の思い→未来の展望
- 一本の線でつながっている
今すぐできる準備
面接まで1ヶ月以上ある方
- 現地訪問を計画する
- その地域を訪れる
- できれば施設見学や説明会に参加
- 地元の人と会話する機会を作る
- 自分史を振り返る
- なぜこの分野に興味があるのか
- 自分の価値観は何か
- どんな経験が今の自分を作ったか
- 組織研究を深める
- ホームページの隅々まで読む
- 統計資料を確認する
- 類似組織との違いを明確にする
面接まで2週間の方
- 最低限の現地訪問
- 土日を使って現地へ
- 1時間でもいいので街を歩く
- カフェや公共施設に立ち寄る
- エピソードの整理
- 今ある経験を書き出す
- どれが使えるか選別する
- ストーリーにまとめる
- 想定質問への回答準備
- 「なぜうちなのか?」
- 「他でもいいのでは?」
- 「どの施策に興味があるか?」
面接まで3日の方
焦らないでください。今からでもできることはあります。
- オンラインで現地を知る
- Googleマップのストリートビュー
- 自治体のSNS
- 地域のニュース
- 自分の言葉で語る練習
- 暗記ではなく
- 自分の経験を自分の言葉で
- 何度も声に出して練習
- 誠実さを武器にする
- 知らないことは素直に認める
- でも興味があることは伝える
- 学ぶ姿勢を示す
まとめ:志望動機は「営業」ではなく「自己理解」
志望動機を考えることは、自分を売り込む「営業トーク」を作ることではありません。
本質は、自分自身を深く理解することです。
- なぜこの仕事に惹かれるのか
- 何を大切にして生きてきたのか
- どんな未来を描きているのか
これらを深く掘り下げ、言語化するプロセスこそが、志望動機作りの本質です。
そして、その答えは必ずあなたの経験の中にあります。
チェックリスト
□ 「なぜここでなければならないのか」に答えられる
□ 実際に現地を訪れた(またはその予定がある)
□ 具体的なエピソードが1つ以上ある
□ 自分の価値観と結びついている
□ 組織独自の魅力を語れる
□ すべてが一つのストーリーでつながっている
□ 自分の言葉で語れる(暗記ではない)
すべてにチェックが付いたら、あなたの志望動機は他の受験者と明確に差別化できています。
自信を持って面接に臨んでください。応援しています!
